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定額減税が給与計算に与えるインパクト? その4

定額減税についての話も4回目になりました。 考えれば考えるほど闇が深い・・・   今回は、具体的な金額を見ながら、定額減税が給与計算に与えるインパクトを確認していきます。 コラムその2で定額減税の対象者と、定額減税の金額を確認しました。   具体的な計算について、国税庁からお知らせが出ています。 令和6年分所得税の定額減税の給与収入に係る源泉徴収税額からの控除についてhttps://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/pdf/0023012-247.pdf令和6年1月19日財務省 国税庁 抜粋 これによると、6月支給分給与から源泉所得税を始めて、定額減税の合計額に到達するまで調整し続ける必要があるわけです。 定額減税対象が本人のみ(所得税30,000円・住民税10,000円)だとしても、12月+年末調整までかかります。 簡単に、今年の5月支給分から12月支給分の賃金台帳を作ってみました。 賃金台帳  5月支給分4/16 – 5/15  6月支給分5/16 – 6/15  7月支給分6/16 – 7/15  8月支給分7/16 – 7/31  9月支給分8/1 – 8/31 10月支給分9/1 – 9/30 11月支給分10/1 – 10/31 12月支給分11/1 – 11/30 5月支給分〜12月支給分小計 支給合計 230,000 230,000 230,000 230,000 230,000 230,000 230,000 230,000 1,840,000 社会保険料合計 35,772 35,772 35,772 35,772 35,772 35,772…

定額減税が給与計算に与えるインパクト? その3

  さてさて、定額減税についてのコラムも3回目になりました。 給与計算が重要な業務のひとつである私たちにしては、なかなかに面倒で実務に影響の大きい制度だと思っています。 しかし、決まったものは仕方ありません。 できる限り、早く終わってほしいっ…! というか、そもそも源泉所得税が1ヶ月で30,000円以上になる従業員って、給与いくらもらってんの!?って思いませんか?   定額減税が1回で完了する給与金額を簡単に計算してみました。 (介護保険料がかからない39歳以下で計算※令和6年1月時点の料率) 労働者負担となる社会保険料率は下記のようになります。 健康保険料    5.18% 厚生年金保険料  9.15% 雇用保険料     0.6% 計        14.93%   所得税法の扶養親族0の場合 本人のみですので、定額減税額は30,000円。 源泉所得税月額表を確認してみると、源泉所得税が30,000円を超えるのは、社会保険料等控除後の給与金額が503,000円〜506,000円の場合です。 503,000円を100%-14.93%=85.07%で割り返すと 課税支給額 592,277円以上 う〜ん、結構稼いでる方ですね〜。    所得税法上の扶養親族1名の場合 ・定額減税対象の扶養親族1名の場合  →定額減税の金額 本人分30,000円+扶養親族分30,000円=60,000円 社会保険料等控除後の金額が707,000円〜710,000円で60,480円です。 課税支給額 831,080円以上   ・定額減税対象の扶養親族2名(配偶者+16歳未満1名)の場合   →定額減税の金額 本人分30,000円+扶養親族分30,000円×2=90,000円 社会保険料等控除後の金額が844,000円〜で90,120円です。 課税支給額 992,124円以上 キリがありませんので、このあたりにします・・・  実際には1回の給与計算で定額減税が完了する対象者はごくごく少数になると考えられます。   ということは、ほとんどの社員については、定額減税をした金額と 定額減税の残りの金額を毎月計算した上で給与明細に記載し、管理する必要があるということです。   普通に考えて、これ、とても面倒ですよね。 給与ソフトを導入していても、チェックは必須ですし、ましてやソフトが無い場合は・・・   残り5ヶ月程度です。早めに対応を検討していきましょう。   ご不明な点は、いつでもご相談ください。 御社にお伺いし、社長や役員の方、給与計算担当者のお悩みをお聞きします。 松本労働法務事務所  代表 社会保険労務士 松本洋太 chellissta@gmail.com

定額減税が給与計算に与えるインパクト? その2

国税庁から定額減税についてのお知らせが出ましたね!待ってました! ここで情報出てくると、本当にやるんだーって気持ちになってきますね。 定額減税について https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/01.htm国税庁HP     今回は主に所得税の定額減税についてまとめます。   さて、定額減税の対象者は、給与収入2,000万円以下である方です。 中小企業の給与計算では、ほぼ全員対象になると思います。 給与計算担当のみなさま、頑張りましょうっ・・・!   次に、定額減税の金額は・・・ 1 本人 30,000円 2 同一生計配偶者 1人につき30,000円 3 扶養親族    1人につき30,000円 ここは、以前からの情報と変わりありません。   どうやって給与計算するの? 特に、配偶者や扶養親族は、どの時点の情報で判定するの?という部分ですが、 「令和6年6月1日以後最初の給与等の支払日までに提出された扶養控除等申告書に記載された情報に基づき、特別控除の額を計算する。」  とのこと。 現実的には、年末調整で提出された扶養控除等申告書を基に計算するということですね。   年末調整だけ税理士先生にお願いしている企業さんは、かならず扶養控除等申告書を確認して、扶養情報を給与ソフトに取り込んでください(忘れないように、すぐやりましょう)   次回以降、具体的な給与計算方法を確認していきます。   詳しくは次回以降まとめていきますが、 6月1日以降、定額減税をした金額と、定額減税の残りの金額を給与明細に記載する必要が出てきます。   これまで手計算やエクセルで給与計算を行っていたという企業様は、早め早めで給与計算ソフトの導入を検討なさった方が良いかと思います。   ご不明な点は、いつでもご相談ください。 御社にお伺いし、社長や役員の方、給与計算担当者のお悩みをお聞きします。 松本労働法務事務所  代表 社会保険労務士 松本洋太 chellissta@gmail.com

定額減税が給与計算に与えるインパクト? 令和6年度税制改正について

令和5年12月14日に令和6年度税制改正大綱が公表されました。 世間でも大騒ぎになっています定額減税のお話。現実のものになるようです。 ニュースで初めて耳にした時から嫌な気がしていましたが、給与計算担当者に直接「モロに」影響するようですね。   まず、住民税の定額減税額ですが 本人1万円  控除対象配偶者および扶養親族(前年の合計所得金額48万円以下)1人につき1万円   給与から特別徴収をしている従業員については、各市町村が計算して送ってくる予定です。 しかし、控除対象配偶者・扶養親族については、適切に年末調整を行って給与支払報告書を提出している必要がありますね。 例えば、16歳以下の扶養親族は所得税に影響しないから〜なんて言って、年末調整での入力を省いていたら・・・ 恐ろしいですね。 現在、絶賛年末調整中の企業担当者さま、給与支払報告書作成前に見直ししましょう!   次に、所得税の定額減税額は、 本人3万円 同一生計配偶者および扶養親族1人につき3万円 R6年6月1日以後最初に支給される給与(賞与)の源泉税から控除。 控除しきれなかった場合には、7月以降に繰越(!)   ちょっと。。。頭痛いですね。 A事業所に勤める、マツモトさんのケースで試算してみましょう。 ・39歳 男性 ・同一生計配偶者(合計所得48万円以下)有り ・扶養親族(合計所得48万円以下)(16歳未満)2名 所得税定額減税額 本人3万円+同一生計配偶者3万円+扶養親族3万円×2 =12万円 住民税定額減税額 本人1万円+同一生計配偶者1万円+扶養親族1万円×2 =4万円   直近の給与明細を見てみると・・・ 総支給額 420,000 社会保険料控除合計 61,273 所得税控除額 9,840 住民税控除額 25,000 差引支給額 323,887   夏の賞与明細は 総支給額 500,000 社会保険料控除合計 74,650 所得税控除額 34,743 差引支給額 390,607 どうでしょう。企業規模にもよりますが、まあまあ、ありそうな設定ですよね。 R6年6月以降の給与計算がどう変わってくるのか、検討してみましょう。   6月25日支給分 総支給額 420,000 社会保険料控除合計 61,273 所得税控除額 9,840⇨0(定額減税控除繰越額110,160) 住民税控除額 25,000⇨0(市町村から届いた特別徴収一覧表より) 差引支給額 323,887⇨358,727   7月10日支給 夏季賞与…

106万の壁って? 社会保険の適用拡大について

  あれ?壁って103万と130万じゃなかったっけ? って思いませんか?   はい。そうなんです。令和5年10月から、新しい壁ができました。 影響があるのは、従業員数51名以上の企業にお勤めのパートさんです。   これまで社会保険に加入しなくて良かったパートさんのうち、 下記の4つの条件に該当する方は社会保険に加入する必要が出てきます。 ①週の所定労働時間が20時間以上②基本給及び諸手当が月額8.8万円以上(!)③2ヶ月を超える雇用の見込みがある④学生ではない 厚生労働省 社会保険適用拡大 特設サイト ここです!ここの②の月額8.8万がポイントです。 8.8万円×12ヶ月≒106万ということなんですね。   最初は誰も106万の壁、なんて言ってないんですよね〜。 「〇〇の壁」って言うとキャッチーですから、つい使いたくなる気持ちはわかりますが、 年収106万円とはどこにも定められていません。   いろいろな「壁」がありますが、あんまり増やしてほしくないな〜というのが本音です。   社会保険については ①130万の壁  配偶者の被扶養者認定がされる年収限度額 ※収入の上昇が一時的であると事業主が証明すれば、2年を限度として扶養に入り続けられるよう仕組みができる予定です。 ②106万の壁 従業員51名以上の企業で週20時間〜30時間の間で働くパート・アルバイト従業員が 社会保険に加入しなくて良い限度額(月額8.8万)   所得税については ①103万の壁 配偶者が所得税の配偶者控除(所得控除額38万)を受けられる限度額   ②150万の壁 配偶者が所得税の配偶者特別控除(所得控除額38万)を受けられる限度額(!) ・・・そうなんです。所得控除の金額は、年収150万まで変わりません。 ややこしいですねー。 扶養の話をする際には、社会保険の扶養の話なのか、 それとも所得税の扶養の話なのか、「壁」を確認してからにしましょう!   お困りの際には、いつでもご相談ください。 松本労働法務事務所 代表 社会保険労務士 松本洋太chellissta@gmail.com

最低賃金と残業代基礎単価の計算方法について

  令和5年10月から最低賃金が40円近く上がりました。 みなさま従業員の方々の最低賃金チェックは終わりましたか?   時給計算の場合は大丈夫ですね。 素直に、地域別の最低賃金と比較しましょう。   では、月給の場合は? 月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額) 年間カレンダーなどで把握した(毎年作成していますよね?)月平均所定労働時間で、月給を割ることになります。   次に、上記の月給に含まれる手当は? 一瞬、わからなくなりますよね。いつも計算している時間単価は残業代の基礎単価でして、最低賃金の単価は計算方法が違います。(住宅手当は最低賃金の計算基礎に入ります) 具体的には、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。 ① 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)② 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)③ 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)④ 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)⑤ 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)⑥ 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当 (最低賃金の効力) 最低賃金法 第四条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。 3 次に掲げる賃金は、前二項に規定する賃金に算入しない。 一 一月をこえない期間ごとに支払われる賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの 二 通常の労働時間又は労働日の賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの 三 当該最低賃金において算入しないことを定める賃金 厚生労働省が最低賃金に関するセルフチェックシート(エクセル)を用意しています。 ダウンロードして、事業場内で一番月給が少ない人だけても、チェックしてみてください。 一方、残業代(割増賃金)の基礎を計算する場合は、下記の①〜⑦以外の賃金を全て集計して時間あたりの単価を計算することになります。(住宅手当は残業代の計算基礎に入りません) ① 家族⼿当② 通勤⼿当③ 別居⼿当④ ⼦⼥教育⼿当⑤ 住宅⼿当⑥ 臨時に⽀払われた賃⾦⑦ 1か⽉を超える期間ごとに⽀払われる賃金 (時間外、休日及び深夜の割増賃金) 労働基準法 第三十七条  ⑤ 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。 労働基準法施行規則 第二十一条  法第三十七条第五項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第一項及び第四項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。 一 別居手当 二 子女教育手当 三 住宅手当 四 臨時に支払われた賃金 五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金 最低賃金の基礎計算と残業代の基礎計算、微妙に違うので気をつけていきましょう! 別の話ですが、令和5年9月現在、在宅勤務手当を残業代の基礎から外す方向で検討が進められています。 「厳格な実費弁償以外の在宅勤務手当についても、計算方法が合理的なものについては「割増賃金の基礎となる賃金」から除外できるよう、行政解釈で明記すべき」という経団連の要望を受けての動きのようです。   決定されれば、上記の労働基準法施行規則に追加されることになるのでしょうか。 今後の正式な発表を待ちましょう。  …

令和5年10月6日発効 福岡県最低賃金 

1時間     941 円   前年から40円と、今年も最低賃金が大きく上昇することになりました。 2030年代半ばまでに全国平均1,500円となるまで、このペースで上げてゆく政府方針が示されています。   最低賃金で計算をしていた従業員の給与を改定すると、他の従業員も改定しないとバランスが取れない・・・ この時期、みなさま頭を悩ませているのではないでしょうか?   そもそもの話になりますが、月給者の方の最低賃金はチェックできていますか? 月給の場合は【月給÷1ヶ月平均の所定労働時間】で計算することになります。 最低低賃金の対象となる賃金は、実際に支払われている賃金から、精皆勤手当・通勤手当・家族手当、時間外手当等割増賃金、賞与、臨時の賃金を除外したものが対象です。 正確に1ヶ月平均の所定労働時間を把握するためには、年間カレンダーを作成して年間の所定労働時間を所定労働日数で割る必要があります。 意外と、この部分を見落として最低賃金を下回っていることがあります。 このタイミングで見直していきましょう。   困ったときは、いつでもご相談ください。 松本労働法務事務所 代表 社会保険労務士 松本洋太chellissta@gmail.com