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懲戒処分 どのくらいが妥当なの?

懲戒処分の指針について(人事院事務総長発)

人事担当のみなさま、こんにちは。

 

今回は、懲戒処分の量定(懲戒処分の程度を定めること)についてお話しします。

従業員が会社のルールに違反した場合、懲戒処分が必要になることがありますが、その量定が曖昧であると、公平性が失われ、会社内での信頼が揺らいでしまう可能性があります。適切な懲戒処分を行うために、事前に明確な基準を設けておくことが重要です。

 

1. 懲戒処分の基準を明確にすることの重要性

「どういった行為をすれば、どのような処分になり得るのか」を企業内で明確にしておくことは、従業員のモチベーションや職場環境に大きく影響します。

懲戒処分の基準が曖昧だと、従業員は自分の行動がどのように評価されるのか不安に感じるでしょう。特に、パワーハラスメントに関するケースでは、部下への指導との境界が不明瞭になることがあります。

 

明確な基準がない場合:管理職が部下を適切に指導する際に、処分基準が曖昧だと、「自分の指導がハラスメントと見なされるかもしれない」という懸念から、指導のモチベーションが低下してしまうことがあります。

懲戒基準の策定:企業としては、具体的な懲戒処分の基準を定め、従業員に周知しておくことが大切です。これにより、従業員も安心して業務に臨むことができ、管理職も自信を持って指導が行えます。

 

2. パワーハラスメントと指導の区別

パワーハラスメントの問題が取り沙汰される中で、部下への指導が適切な範囲を超えていないか、または厳しすぎると判断されないかに対する懸念が高まっています。指導が過剰であった場合、懲戒処分の対象となる可能性がありますが、あくまで「懲戒に値するかどうか」の判断基準は、企業の方針に基づいています。

 

曖昧な処分基準がもたらす影響:基準が不明瞭だと、管理職が適切な指導をためらい、結果的に部下の育成が遅れることになります。指導と懲戒処分の基準を明確にし、社員にその違いを理解させることが重要です。

 

3. 懲戒処分のバランスと公平性

懲戒処分を行う際は、その処分がバランスを欠いたものになっていないか、常に検証することが重要です。例えば、似たような違反行為があっても、処分が異なれば不公平感が生じ、従業員の士気が下がる可能性があります。

 

バランスの確認:同じ種類の違反に対して、同じ処分を行っているかを定期的に見直す必要があります。不均衡な処分が行われていないか、懲戒処分の履歴や事例を検証し、公平な対応を維持することが企業の信頼性を保つために大切です。

 

4. 事前の検討が必要

懲戒にあたるような出来事が実際に起こる前に、どのような基準で懲戒を行うのかを事前に検討しておくことが必要です。

突然のトラブルや問題行動が発生した際、事前に基準が決まっていないと、対応が場当たり的になりかねません。

 

事前に基準を設定する理由:基準が事前に定められていれば、問題が発生した際に迅速かつ適切な対応が可能になります。また、処分を受ける従業員も事前にその基準を知っていることで、処分の妥当性に納得しやすくなります。

 

5. 人事院の「懲戒処分の指針」参考に

人事院が発行している「懲戒処分の指針について」を参考にすることは、企業にとって非常に有用です。この指針では、懲戒処分の基本的な考え方や、適用すべき基準について詳しく説明されています。

 

指針の活用:人事院の指針を参考にすることで、自社の懲戒基準を検討する際の指針となり、他の企業での実例を踏まえた判断が可能になります。また、指針に基づいて基準を作成することで、処分の客観性が高まります。

 

最後に

懲戒処分の量定は、企業内での信頼関係や公平性に直結する重要な課題です。基準を事前に明確に設定し、バランスの取れた処分を行うことで、従業員のモチベーションを保ちながら、企業全体の健全な運営に貢献することができます。

お困りの際には、いつでもご相談ください。

松本労働法務事務所 
代表 社会保険労務士 松本洋太
chellissta@gmail.com